メタボリックシンドローム

メタボリックシンドローム(代謝症候群)とは

内蔵脂肪蓄積型肥満に、高血糖・高血圧・高脂血症の3つの生活習慣病のうち
2つ以上を合併した状態で、動脈硬化性疾患(ex脳梗塞、心筋梗塞など)発症のリスクが非常に高い状態を言います。
メタボリックシンドロームという病気として捉えて良いかどうかはまだ議論の余地が残されています。

糖尿病、高血圧、高脂血症はそれぞれ、動脈硬化性疾患の原因となる病気ですが、特にライフスタイルの乱れから来る内臓脂肪型肥満が生活習慣病発症の原因となっている場合は、これまでの死の4重奏とかシンドロームXと呼ばれ、動脈硬化性疾患との関係が指摘されていました。
やせているにも関わらず、糖尿病、高血圧、高脂血症に罹患している場合は、遺伝的(体質的)素因が大きいため、このメタボリックシンドロームの概念を単純に当てはめるわけには行きませんが、動脈硬化性疾患の発症率が高いのは同様であり、安心は出来ません。血圧が高いが、私は痩せているから心配ないとは決して言えません。

厚生労働省は国民医療費削減の観点からも生活習慣病の予防対策に躍起となっており、近々健診項目に腹囲の測定を含め、このメタボリック症候群の状態にある人達への生活指導の足がかりにしようと考えているようです。

メタボリックシンドロームの診断基準

日本肥満学会、日本動脈硬化学会など8つの学会が2005年4月に公表したメタボリックシンドロームの診断基準は、以下のとおりです。

腹囲(ウエスト周囲径)が男性は85cm以上、女性90cm以上(内臓脂肪面積100平方cm以上に相当)
に付け加え、
1.中性脂肪値150mg/dl以上か、HDL(善玉)コレステロール値が40mg/dl未満。あるいはその両方 
2.最大血圧が130mmHg以上か、最小血圧が85mmHg以上。あるいはその両方 
3.空腹時血糖値が110mg/dl以上 

・CTスキャンなどで内臓脂肪量測定を行うことが望ましい。 
・腹囲は立っている姿勢で、呼吸が荒くない時にへその位置で測定する。脂肪の蓄積が顕著でへそが下方に偏位している場合は、肋骨下縁と前上腸骨棘の中点の高さで測定する。 
・メタボリックシンドロームと診断された場合、血糖負荷試験がすすめられるが診断には必須ではない。 
・高中性脂肪血症、低HDLコレステロール血症、高血圧、糖尿病に対する薬剤治療を受けている場合は、それぞれの項目に含める。

メタボリックシンドロームの原因

メタボリックシンドローム

メタボリックシンドロームの大きな原因は内臓脂肪型肥満。

なぜ、内臓の周囲に脂肪が溜まるかといえば、食生活の欧米化による高脂肪・高カロリーの食事、過食やお酒の飲みすぎ、運動不足、生活リズムの乱れが原因としてあげられます。 

内臓脂肪の脂肪細胞からは、インシュリンの働きを悪くさせたり、動脈硬化を悪化させたるような悪玉アディポサイトカインである、TNF-αやPAI-1が分泌されます。
また、動脈硬化を防いでくれる善玉アディポサイトカインであるアディポネクチンは内臓脂肪が増えれば増えるほどその分泌が抑えられ、結果的に動脈硬化が進みやすくなります。

内臓脂肪型肥満があると、高脂血症、高血圧症、糖尿病のそれぞれの病気が軽症で薬を服用する必要が無い程度のものであっても、動脈硬化性疾患の発症率が飛躍的に高くなります。
(健康人に比べ、約40倍程度動脈硬化性疾患の発症率が高くなり、これに喫煙習慣が加わるとさらに数倍リスクが高くなります。)

メタボリックシンドロームの改善法!!

栄養バランス

メタボリックシンドロームは病気と言うより、病気になりやすい体の状態と考えて頂いた方が良いかもしれません。
従ってメタボリックシンドロームを治す薬はなく、メタボリックシンドロームの状態から抜け出すために、生活習慣を改善し内臓脂肪を減らすしかありません。

幸い内臓脂肪は、皮下脂肪より減りやすく、ダイエット、運動療法の効果は比較的早くからあらわれます。
また、どれだけ減らさなければ意味がないという閾値もなく、1Kgでもウェスト1cmでも減らせば、減らしただけの効果があると言われています。


■食事
脂肪や油脂の多い高脂肪食や高カロリー食をとっていませんか? 肉類ばかりに偏らないで、魚介類や豆類、緑黄色野菜、海藻類、きのこ類などいろいろな食材を取り入れた栄養バランスのよい食事をしましょう。
また、過食や甘い物の食べ過ぎ、お酒の飲みすぎは、カロリーの取り過ぎから、内臓脂肪を増やしてしまうことにつながるので注意しましょう。1日3食できるだけ規則正しい時間に食事をし、食べる時はよく噛んで腹8分目を保つことが、過食による肥満を防ぐために大切です。 →詳しくはこちら


■運動
適度な運動は、インシュリンの働きを良くして血糖値を下げたり、基礎代謝を増加させダイエットの効果をより高めるだけでなく、ダイエットのリバウンドを防いでくれます。
週に2、3回以上、1回30分以上、何かスポーツをすることをおすすめします。特に、ウォーキング、エアロビクス、水泳、ジョキングなどの有酸素運動がベストです。肥満気味の人や、なにか持病がある人は、まずどんな運動をどの程度してよいか、メディカルチェックを受けてから始めましょう。
忙しくて運動をする時間がない、あるいは運動が苦手という人は、1日一万歩を目標にできるだけ歩くようにすれば、それだけで1日約300kcal消費できます。運動療法については下に追加で項を設けます。


■ライフスタイル
不規則な生活や、夜型のライフスタイルは、朝食抜きになりがちです。また、自律神経の働きが乱れて、体調不良になったり、ストレスを感じやすくなったりしがちです。
なるべく早寝早起きを心がけ、十分睡眠をとり、趣味などでストレスを早めに解消するようにしましょう。
また、喫煙本数が増えれば増えるほどメタボリックシンドロームによる動脈硬化性疾患の発症リスクを押し上げる、という研究結果が報告されています。禁煙を心がけましょう。

運動療法について

日本人と米国人のエネルギー摂取量の年次推移

ダイエットの中心は食事療法ですが、運動も欠かせない要素です。食事制限のみのダイエットはリバウンドを起こしやすく、運動を日々続けていくことが大切です。
 飽食の時代と言われてはいますが、実は国民一人あたりのカロリー摂取量は30年前と比較すると10%以上減少しています。一方、国民の肥満度をBMIで見てみると、男性では20代から、女性では40代からこの30年間で2割近く増えています。(図を参照)
 原因としては、食事内容の変化(動物性脂肪の摂取割合が増えていること)を指摘する見方もありますが、肥満の成因が摂取カロリー量と消費カロリー量のバランスが取れていないこと(摂取カロリー量の相対的過剰)であることを考えると、消費カロリー量の低下が最も大きな要因と考えられます。自家用自動車、エレベーターやエスカレータの普及、農業現場、工場の機械化などが、日常生活の中での運動量を減らしているのは間違いない事実です。

 昨年、厚生労働省は「健康作りのための運動指針2006」(以下エクササイズガイド2006と称します)をまとめ、生活習慣病予防に生かそうとしています。この指針に基づいて運動療法の考え方を紹介します。

この項でお話しするのはあくまでも一般健康人(メタボリックシンドロームの方も含めますが)が対象ですので、明らかな心疾患、動脈硬化性疾患(狭心症、心筋梗塞、脳梗塞)などで療養中の方は参考にとどめ、主治医の先生の指示に従ってください。

 エクササイズガイド2006では安静にしている状態以外の全てのエネルギーを消費する動きを「身体活動」、そのうち体力の維持・向上を目的としたものを「運動」、身体活動の中で運動以外のものを「生活活動」と定義しています。この項でもエクササイズガイド2006に従って、話題を進めます。

 これまで身体活動(運動)量は、消費カロリー量で示されることが一般的でしたが、この方法では体を動かしている人の体重が考慮されません。同じ運動をしても、体重の多い人の方が当然消費カロリー量が多くなります。そこでエクササイズガイド2006では、身体活動を表す単位として、メッツ(身体活動の強さ)、エクササイズ(身体活動の量:メッツ・時)を使って表します。
 1メッツは安静にしているときの身体活動の強さであり、普通歩行は3メッツ、ジョギングは6メッツに相当します。
 エクササイズは身体活動量を表し、メッツに時間をかけたものです。
3メッツの身体活動を一時間続けた場合と6メッツの身体活動を30分続けた場合どちらも3エクササイズとなります。
 1エクササイズの身体活動量に相当する消費エネルギー量は身体活動を行った人の体重により異なり、体重1Kgあたり約1kcal(正確には1.05kcal)とされています。この点でこれまでの運動療法と異なり、運動療法をされる人の体重を考慮した運動療法の処方(運動の仕方の具体的指示、プログラム)が可能となります。

メタボリックシンドロームの改善法の実際

内臓脂肪減少シート

メタボリックシンドロームの改善方法の具体例を考えてみましょう(内臓脂肪減少シートを参照のこと)

例えばAさん、男性、40才、 身長170cm、体重80kg BMI 27.7 腹囲90cmです。
 Aさんは何とかメタボリックシンドロームから脱却したいと、運動療法、食事療法に取り組もうと考えました。
 まずは腹囲を5cm減らしましょう。内臓脂肪減少シートの”確実にじっくりコース”でダイエットに取り組みます。目標値とする腹囲は85cmですから、1ヶ月に1cmずつ減らすためには、5ヶ月間かかります。 腹囲を1cm減らす事は、内臓脂肪1kgを減らすことに相当します。内臓脂肪1kgを減らすために必要なエネルギー量は7000kcalですから、一日あたり230kcalを生活習慣の改善で減らさなければなりません。
 これまで車で通勤していたのを、自宅から早足で約15分かかる駅まで歩くことにしました。これは1エクササイズに相当する運動量です。早足は4メッツの運動の強さ、それを15分間続ければ4×15/60=1です。消費カロリー量は4メッツから安静にしているときの1メッツを減じ3メッツ×15/60×80(体重:Kg)×1.05=63kcalになります。朝晩2回歩くわけですから63×2=126kcalが消費されます。230kcalのうち126Kcalは身体活動により減らすことが出来たわけですから、残りの104Kcalを食事で減らせば良いことになります。
 休みの日には、一日あたり2エクササイズの身体活動を行えば良いことになります。運動ならボーリング40分、軽いジョギング20分、水泳(ゆっくり)20分が2エクササイズに相当します。生活活動では庭仕事や自転車30分で2エクササイズです。こう考えると、一日あたり2エクササイズの身体活動はそれ程負担なものでは無いと考えられます。

食事療法や運動療法は続けることが大切なのです。飛ばしすぎて息切れして止めてしまえば、元の木阿弥です。続けることが大切と考えてください。「継続は力」なのです。

 これでAさんの身体活動は2エクササイズ×7=14エクササイズ/週となります。実はエクササイズガイド2006では週23エクササイズ以上が推奨されており、そのうち運動が4エクササイズ含まれることを目標としています。これまで運動らしい運動から長い間離れていたAさんが、最初から目標値を達成するのは少し無理があります。出来ることから始め、その成果が出てきた段階で、最終的な目標値に向かうのが現実的であると考えます。減量に成功すれば、自然と運動量が増えてくることは私自身体験しました。太っていた時に階段を上るのが苦痛であったのが、減量後は何の苦もなく階段を使用できます。運動量は徐々に増やす考え方で十分だと思います。

エクササイズガイド2006についての資料はこちらで入手可能です。




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